キミへ
「お迎えに参りましたよ?お姫様」
「…はぁ。」
もうそんな時間か…。
再びテンションが下がるあたしを、怜衣たちは不思議そうに見ていた。
「あ、玲音くん、だっけ?」
「あ?」
「きみにもお迎え、来てたよ」
「………あっそ」
素っ気ない返事をして、カバンを手に取り立ち上がる玲音。
そんな玲音に続くようにしてあたしもカバンを持って立った。
「?…かえんのか?」
「ああ、うん。ちょっと家の用事で、ね…」
遠い場所を見つめながらそう言い、みんなに一言「バイバイ」と言ってから教室を出た。
「はぁぁ…萎える…」
「深い溜め息をつくな。移る」
「あはは、厳しいなぁ。玲音くん」
最初はいやがってた來だけれど、女がいると言った瞬間にころりと態度を変え行く気になった。
誰かこいつをタラシから救ってやってくれ。
「じゃ、俺こっちみたいだから」
「ああ…うん。また後で、だね」
「じゃあねぇ、玲音くん」
玲音と別れ告げ、あたしたちも車が付けられている所に行った。
そこにつくと、運転手さんがドアを開け軽く頭を下げていた。
「ご苦労様です」
そう小さく呟いて、車に乗り込んだ。
そして、運転手がシートベルトをして少ししてから車は発進した。
「楽しみだねぇ、杏菜」
「全ッ然」
「あはは…」
「自分だって最初はいやがってたクセに」
「最初はね。でも女の子がいるとなったら話は別だよ」
「…あっそ」
こいつのタラシは一生直らないな。
そう密かに心の中で思った。