キミへ
ところ変わって、とあるグランドホテルの中。
伊良内グループの人と、軽い挨拶を交わしてから他のグループの人のところに挨拶へ向かった。
「あ、杏菜」
「ん?」
來亞が指差す方を見れば玲音がいて、あたしに気付いてにこっと笑った。
「玲音くんだね」
「そうだね。ちょっと行ってくる」
周りの人達に軽く会釈をし、玲音のところまで行った。
「さっきぶり」
「ほんとにね。…似合ってるよ、ドレス」
にこりと笑って言った玲音に、あたしは少しだけ頬を赤くした。
「顔、赤いよ」
「…わざわざ言わなくても、知ってる」
じろりと睨めば、楽しそうに笑った。
「おや?あなたは…」
するとそこにダンディーな叔父様が現れ、あたしは営業スマイルを浮かべた。
「初めまして。間宮杏菜です」
「ああ、やはりそうでしたか。…お初に御目にかかります。茨木鉄雄、と申します」
『以後お見知りおきを…』という叔父様に、あたしは『こちらこそ』と言った。
茨木…玲音のお父さん、かな?
「親父…」
やっぱり、当たったか。なんか似てるよなぁ、雰囲気とか。
「いつも玲音くんにはお世話になってます」
「いやいや、こちらこそ。粗相してないか…」
「どーゆー意味だよ…」
そんな親子のやり取りにクスクスと笑った。
「粗相などとんでもない。よくしてもらっていますよ」
「そうですか、それはよかった」
にこりと笑みを見せれば安心したような表情を浮かべた。