キミへ
叔父様と少し談笑してから、叔父様は父さんのところへ行った。
「杏菜って…そんな喋り方だっけ?」
「そうだけど?…って言いたいけど、違います」
お嬢様口調にしてるに決まってるじゃないか。
てゆーか、これやってると疲れるんだよねぇ…。
「はぁ…」
「お嬢様は大変だなぁ」
「…よく言うよ。営業スマイルしちゃって」
「それはお互い様」
玲音はにこりと笑い、近くにあったジュースを渡してくれた。
「ありがと…」
「どういたしまして」
「杏菜」
一口、口を付けたところに來亞がやってきた。
グラスから唇を離し、リップが付着した部分を親指で拭き來亞の方を見た。
「どうかした?」
「父さんが杏菜連れて来いって」
「わかった」
玲音に別れを告げ、伊良内グループであろう人と喋っている父さんのところに向かう。
「父さん」
「おお、ありがとな來亞」
「何かご用ですか?」
伊良内グループの人が『初めまして』と言ったのを聞いて、あたしはそっちを向いた。
「いや、お久しぶり、と言った方がよろしいですかな?杏菜様」
「?…どこかでお会いしましたか?」
あたしの記憶上、伊良内の人と知り合った覚えはない。
「覚えていらっしゃらないのも無理はない。あれからもう、12年経っているのですからね」
「??」
ますますわけがわからなくなって、首を傾げた。