キミへ


叔父様と少し談笑してから、叔父様は父さんのところへ行った。



「杏菜って…そんな喋り方だっけ?」

「そうだけど?…って言いたいけど、違います」



お嬢様口調にしてるに決まってるじゃないか。

てゆーか、これやってると疲れるんだよねぇ…。



「はぁ…」

「お嬢様は大変だなぁ」

「…よく言うよ。営業スマイルしちゃって」

「それはお互い様」



玲音はにこりと笑い、近くにあったジュースを渡してくれた。



「ありがと…」

「どういたしまして」

「杏菜」



一口、口を付けたところに來亞がやってきた。

グラスから唇を離し、リップが付着した部分を親指で拭き來亞の方を見た。



「どうかした?」

「父さんが杏菜連れて来いって」

「わかった」



玲音に別れを告げ、伊良内グループであろう人と喋っている父さんのところに向かう。



「父さん」

「おお、ありがとな來亞」

「何かご用ですか?」



伊良内グループの人が『初めまして』と言ったのを聞いて、あたしはそっちを向いた。



「いや、お久しぶり、と言った方がよろしいですかな?杏菜様」

「?…どこかでお会いしましたか?」



あたしの記憶上、伊良内の人と知り合った覚えはない。



「覚えていらっしゃらないのも無理はない。あれからもう、12年経っているのですからね」

「??」



ますますわけがわからなくなって、首を傾げた。



< 195 / 203 >

この作品をシェア

pagetop