キミへ
−怜衣side−

杏菜が奥に入っていくのを見て、俺は動いた。



「あっ、ばか! 動くなって!」

「ばかはてめぇだっつの」

「お前マジ三途の川渡らすぞ」



雅は小さく溜め息をついて『行け』って言った。

…こいつ、ホントに女かよ? まぁいーや。



「あ、あん…な……」



俺は杏菜を見て驚いた。

いや、服も驚いたけど寝方に驚いた。

椅子に深く腰掛けて、すっげー足、開いてる…ってそうじゃなくて!



「どんなカッコして寝てんだよ、お前!!」



気づいたら口より体が先に動いていた。



「ん……、れい…?」

「…何? 寝ぼけてる?」



めっちゃ可愛いんだけど。俺の方がヤバイんですけど!?



「………はぁ」



え、溜め息?



「杏菜?」

「ねむ……」

「え、ちょ、」



制止の声も聞かず、規則正しい寝息を立てる杏菜。



「はぁ…。無防備すぎだろ……」




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