皇〜最強の名を冠する者〜
纏わりつくような嫌な風が吹き荒れるなか、崖の上に2つの影があった。
どうやら人のようだが、2人とも銀のローブを着てフードをかぶり、口元を布で隠しているため、その姿までは分からない。
だが、彼らが纏う雰囲気は重々しく、緊張感が伝わってくる。
一際大きく風が吹いて、彼らのローブを翻したとき、背の高い方の影が下に広がる谷底を見てつぶやいた。
「……うわー、気持ち悪ぃ…」
声からして男のようだ。
そして、本人は自覚があるのかは知らないが、先程までの厳格な雰囲気ぶち壊しの発言である。
それを窘めるように、もう1人が口を開いた。
「素が出てますよ、皇帝。任務中なんですから気を抜かないでください。」
もう1人は女であるらしく、その声には呆れが混じっている。