皇〜最強の名を冠する者〜
皇帝と呼ばれた男は女の方に向き直り、指摘された口調を意識しながら言った。
「……そうは言っても仕方ないだろう、妃(ひめ)。あれはさすがに……な。」
再び皇帝は視線を谷底へと戻す。
それにつられて妃と呼ばれた女も谷底を見やり、苦笑の笑みを浮かべた。
「………まあ、否定はしませんけどね…」
それもそのはず。
なんせ先程から2人が言っている谷底には、大量の魔物がいるのだから。
うごうごと蠢くその様は、はっきり言って気持ち悪い。
いや、はっきり言わなくても気持ち悪い。
…………一般人ならば吐くこと間違いなしだ。