街角トレイン
球技大会、開始。
夏高来校。
ポニーテールをして
帽子を被っているから
いつもの栗色で
下部を少し巻いた長い髪は
ほとんど隠れている。
キキくんは、私に気づかない…はず。
でも、内心は…やっぱり
キキくんに気づいてほしかった。
無意識のうちに
私はキキくんを探していた。
キキくんのユニフォーム姿…
かっこいいだろうな…♪
「おーい、ララ!始まるぞ」
川本からの呼び出しだ。
あぁーあ、結局
キキくん見つからなかったな。
これで、いいのか。
「はーい、今行きまーす」
「ララっ!?」
「き、キキくん!」
「なんで男子の野球にいるの?」
嬉しかった。でも…
まずい…人が見てる…!
キキくんのため、私のため。
そう思ったら…
どうってことないよね…?
「誰ですか…、私の知り合い?
すみません。身に覚えがなくて」
「ララ…ちゃん?―……すみません。
人違いでした」
これで、いいんだよね?
私もキキくんも
退学からは逃れたから…
いいん…だよ…ね?
「先輩ー!…誰ですか?この人」
「私の、知らない人」
「…そうですか。先輩、行きましょう」
「うん」
その後、隼人がキキくんに
何か言っているのが聞こえた。
「負けませんから」
そう、確かに聞こえた。
もしかしたら…
隼人は全て悟ったのかもしれない。
私とキキくんは
実は知り合いであること。
私の好きな人は…
キキくんであること。
「気をつけ!礼!」
「「お願いしゃーっす!!」」
隼人、キキくんに
何もしなきゃいいけど。