街角トレイン



「はい!レコーディング始めます」
「…はい」



あの日から
キキとは話さないまま
今日まで来てしまった。



もやもやする…。



キキはガラス越しの
ソファーに座っている。



ヘッドフォンをつけて
キキを見る…



"頑張れ"



キキは確かにそう言った。



このとき
私の中にあるもやもやが
少し晴れた気がした。



♪”あなたは 僕の天使
僕だけを見ていてほしい
一瞬だけでもいい
もしこれが 叶わぬ恋だとしても
僕はあなたの 幸せ願うよ"



ラストサビを歌い終えた。



少し感情を込めすぎたのかなぁ?



涙が私の頬を伝う。



こんな顔は誰にも見てほしくなくて
私は無意識に
スタジオを飛び出していた。



「うっ…キキは…くっ…
誰を見てるの?
…♪私はこんなにも
あなたを想っているのに
この想いは決して届かない
私を見てほしい ずっとずっと…ずっと」



私は涙を堪えながら
自分でその場で歌を作り
キキに届くようにと…
必死に歌った。



いつの間にか
私の周りには事務所のファンが
大勢集まっていて
私の歌に同情したのか
たくさんの人が涙していた。



私が歌い終えると
盛大な拍手が私を包んだ。



私はそのファンの方達に…



「…ありがとうございます」



そう言って、その場を去った。



「ララ!」



キキの声…。



今後ろを振り返ったら
泣いたことがすぐわかる。



だから私は振り向かない。



そんな時だった。



フワ…



「…キキ?」



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