街角トレイン
「ララ…頑張ったな」
「ぐすっ、やだ!優しくしないで」
気づけば私は…
キキの胸の中にいた。
キキは卑怯だ。
付き合えないって言ったくせに。
「ララ…お前のこと、好きだ」
「…好き好きって…
彼女いるくせによくそんなこと―…」
「ララは何もわかってない!」
「…キキ?」
キキの顔は見えなかったけど
真剣なのはすぐにわかった。
「菊は彼女じゃないって
前にも言っただろ?」
「でもキキは…菊さんを
優先させてほしいって…」
「ララと菊、確かにどっちも大事だ。
菊は幼馴染みなんだ。
年下で家も近いから…
妹みたいな存在だった。
俺は菊に恋愛感情とか
そんなのは一切わかなかった。
でも…菊も女のひとりだ。
男を好きになることはある。
それがたまたま俺だったんだ。
ララだってそうだろ?
俺も同じだよ」
キキの言ってる意味がわからない。
だから…何?
幼馴染みだから付き合ってよし?
「意味わかんないよ…。
キキは結局、誰を好きなの?」
「…ララだ」
「キキにとって、菊さんは何なの?」
「ただの…幼馴染みだ」
「菊さんとはこの先
どうするつもりなの?」
「別れるつもりでいる。
だけどそれには…
少し時間がかかりそうなんだ」
「どうして?」
私は質問を繰り返した。
まるで私の心の中に
ぽっかりと空いた穴を
塞ぐかのように。
「菊の命がかかっているから」
「命…?」
「脅しってわかってるけど
本当に死なれたら俺は人殺しだ」
人殺し…。
大袈裟だと思った。
その時は。
「わかったよ。でも…
さっき言った言葉
絶対に忘れないで」
「俺を信じろ」
信じて…いいよね?