街角トレイン
【不幸と幸運】



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「ララ!CD買ったよ♪」



あれから何ヵ月か過ぎ
私の初めてのシングル
『叶わぬ恋』が
昨日発売された。



本名は非公開。
容姿も非公開。



まだ現役の高校生のため
歌手だということは
学校の先生とあかりと…
お父さんしか知らない。



お父さんの見舞いには
レコーディング後に行った。
薬の副作用のため
頭の髪の毛は全て抜け落ち
顔色も悪く
体も痩せ細っていた。



まるで…
お父さんじゃないみたい。



だから私の歌で
お父さんを元気付けるんだ♪



今日の帰りに
お父さんにCDを持っていくつもりだ。



「ララってさぁ、
絶対音感あったんだね」
「そうなの。びっくりだよね」
「でもカラオケとかでちょくちょく
音外れてる!とか言ってたもんね」
「うん…私無意識に言ってた」



ちょっと音の色が違うと
指摘してしまうのが私の癖だった。



「それより、あかり。
どうだった!?私の歌」
「最高だったよ!
なんか聞き慣れた歌声のはずなのに
この歌を歌うときのララの声は…
なんか違う気がした」
「どういうこと?」
「今にも泣きそうな声で
聴き手の"心に"
歌ってくれるみたいで…
すごく響いた。
昔彼氏と失敗したこととか
思い出しちゃって…
涙が出たよ」



私の歌で…泣いてくれる人がいる。



すごく幸せなことだった。



この言葉を糧に
これからも歌い続けたいと思った。



「ありがとね、あかり。
私これからも…
みんなの心に響くように
歌い続けるよ」
「うん。応援してる」



あかり…大好きだよ。



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