街角トレイン



「お父さん!!」



いつも静かなお父さんのいる病室が
今日はとても騒がしかった。



お医者さんが看護婦さんに
指示を出す、大きな声。



ピッピッピッ…
機械から鳴る
お父さんの心臓のリズム。



どこかで見たことのある
こんな場面に私は混乱した。



そんなとき
プレゼントのことを思い出した。



「…そうだ!お父さん!
私のCDね!発売されたの!
ちょっと待っててね?今…」



あれ…?ない!
わす…れた?



でも…どうしても私の歌を
聴いてほしい。



ここで歌うしかない。



…♪いつだって あなたを想っていた
好きだから こんなにも
でもあなたは 振り向いてくれない



「心配停止!心臓マッサージ!早く!!」



涙が止まらなかった。



でも私は、歌い続けた。



お父さんとは
笑顔でさよならしたかったのにな。



「意識戻りました!」
「お父さん!?ララだよ!わかる!?」



私はその言葉に飛びついていた。



お父さんの手をしっかりと握って
涙を堪えながら
必死にお父さんに話しかけた。



「…ララ…か?
お父さんは…大丈夫…」
「こんなときに…
強がらないで!」
「ララ…夢の中で…歌ってた…
いい…声だった……ララ…?」
「何!?ララに言いたいこと!?」
「こんな…お父さんの…
娘…で…いて…くれて…
ありが…とう…」



『ピ―――――…』



「お父さん!お父さん!!
ララはお父さんの娘で
ほんとによかったよ!!ありがとう!!」



笑顔で、言えたかな?



お父さんの最期は笑顔だった。



私の大好きな、お父さんの笑った顔。



お父さんは私を一人取り残して…






お母さんのもとへ
旅立った。






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