夏の日の出来事


「.....」


「由...愛...?」


聖夜があたしの名前を呼ぶ


すぐに聖夜を抱き締めたい


でも...自分勝手すぎるよね...


あたしからフっといて...こんなこと言っても意味はないか...


こんなこと言われても嬉しくないだろうし...


「...北野、行くぞ」


あたしは何も言えずに先輩に連れられた


聖夜がずっと、あたし達を見つめていたことは知らない――


「お前、ホントバカだな~」


「...?」


先輩があたしを見て笑う


「アイツのことが好きならさ、言えばいいじゃん」


「...先輩には...分かりませんよ...」


「ンなモン、分かりたくもねえわ、俺」


「.....」


それはひどいと思います...


「けど、他人のこと考えんじゃねえよ。そりゃ他人を考えなきゃ続かねえこともあるけど...誰だって自分のこと考えて当たり前なんじゃねえの?自分勝手が普通なんじゃねえ?複雑なこと考えて、自分の幸せを自分でつぶすなよ」


先輩は急に真顔になってそう言った


その言葉は...はっきりとあたしの心に染み渡った


「ふ...ッ」


あたしの中で、何かが弾けたように涙が溢れて来る


「泣くの我慢してまで強がってんじゃねえっつうの...」


先輩がぶっきらぼうにあたしの涙を拭う












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