薄桃の景色に、シルエット。
 君は今、何をしているんだろう。

 会いたいなぁって凄く凄く思うけど、会えない。

 俺が外の世界で生きれたのはあの日が最後だった。

 それにこんな衰弱しきった状態を君に晒したくはない。カッコ悪いからな。


 最後に一つだけ。

 俺にも夢がありました。

 叶わないだろうなって諦めてた夢だった。

 でも叶ったよ。涙が出そうなほど嬉しかった。

 何の夢かは恥ずかしいから教えてやんないけど、多分、当り前だと思う人には当り前の夢でした。

 だからきっと、君の夢も叶うはず。俺はそう祈ってる。願ってる。信じてる。

 その夢を胸に頑張ってくれよな。頼むからさ。

 君は絶対絶対、元気になる!!

 この俺が保証する!!

 絶対、大丈夫だからな!!




 ポタッ……

 落ちたそれが、せっかくの文を台無しにする。

 字が滲んでしまって書き直しだ。

 いや、書き直す必要もないか。どうせ出すつもりはなかったんだから。


「よ、元気か?」

「……病人相手にそれってどーかと思うぞ」

「ははっ、それもそうだな」


 みんな見舞わなくなったのに、こいつだけは絶えず来てくれる。

 こんな機械に囲まれて痩せ細ったダチの姿なんか見たくなんかないだろうに。


「なぁ。今までありがとな」

「何だよ、お別れみたいな言葉だな」

「もうすぐそうなるからさ。……そんな怖い顔すんなよ、冗談抜きの真剣な話なんだからさ」

「…………っ」


 何でお前が泣くんだよ。お前は泣かなくていいじゃねーか。
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