薄桃の景色に、シルエット。
「ばかやろ…、柄にもねえ事言ってんじゃねえよ…、ばかやろう…」

「おう、俺は馬鹿だぞ。自慢じゃないが、クラスでも馬鹿なお前より馬鹿だ」

「学校にも来てない奴が何偉そうな事言ってんだよ…」

「え、今の偉そうだったか? 思いっきり自嘲してんじゃんよ」

「ばかやろー…。ほんと、お前といると飽きねえよ…」

「退屈しなくていいだろー!」

「……何もしてやれなくてごめんな……」

「何言ってんだよ。俺はお前に一番感謝してんだぜ」


 いろんな事をしてくれた。俺の無理をいつだって呆れ顔で聞き入れてくれた。


「ありがとうはこっちの科白だ、ばか」

「……ばかって呼ぶのやめてね。地味に傷つく」

「悔しかったら……悔しかったらいつか拳で抗議しやがれ、ばか」

「ぶはっ。名案、そうするわ」


 ありがとう。俺の独りよがりを尊重してくれて。

 このままじゃ、いつかちゃんともっかいお前と出会って借りを返さなきゃいけねーな。


「じゃ……俺、帰るよ」

「ああ。サンキューな。あ、愛してるぜぇっ!」

「ばーか。……じゃあな」


 ああ、またいつか。その日まで。

 暫くの間―――じゃあな。


 そして俺は便箋をビリビリ破いてゴミ箱に捨てた。

 君が好きな真昼の月を見上げようとしたが、カーテンに邪魔されて、宙の青さを目に焼き付ける事さえ叶わなかった。


* * * E n d * * *


 二人のやり取りが妙に楽しくて、つい長々と書いてしまいました。

 これを読んだ方、お疲れ様です。

 もしかしたらまだ続きます。もしかしたらこれで終わります。

 全てはそう、気まぐれな私の気分次第です。

writing by 09/12/02
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