薄桃の景色に、シルエット。
ヒトリ謳歌


 朝起きて、窓を開ける。

 カラカラカラって清々しい音とともに入り込む冬の冷たい空気。

 鼻を満足するだけ冷やして、冷気はまだ飽きないように部屋の中をも冷却する。

 はあぁーっと息を吐いてみれば、光に照らされて白く染まる。

 もう冬だなぁなんて思いながら朝の空気に浸る幸せ。

 そんな事して時間が無くなって慌てて出発する準備。

 ちゃんと準備が出来たら、部屋に向かって声を掛けるの。


「行って来ます!」





 昼は食堂でご飯を食べる。

 あったかいご飯はお腹と気持ちを鎮めて、口許を綻ばせてくれる。

 向かいの席は空いたままで、外はしとしと雨降り。

 傍から見たら寂しい人間なのかな。

 ふとそう思うけど、そんなの関係ない。

 私がそれで良いと思っているのだから。

 ガラス越しみ見つめる外界は雨がたくさんの人から疎まれるようにたくさんの傘があった。

 可哀想な雨がしとしと落ちてて、せめてもの餞に口許を緩ませた。

 私はあなたのこと、嫌いじゃないわ。


「ごちそうさまでした」





 夕方、家までの道のりをひとり歩く。

 ちょっとした買い物を済ませて、寄り道する用もなくて帰路まっしぐら。

 歩きながら、今日の事を思い出す。

 あんな事があったなぁ。こんな事もあったっけ。

 良い事も悪い事もあって笑えばいいのか溜め息をつけばいいのか分からず微苦笑する。

 何だか今日も疲れたなぁって、結局そんな結論になった。

 あぁ、そんなこんなしてやっと着いた。

 カチャリと鍵を開けて、暗い部屋に言う。


「ただいまー」





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