薄桃の景色に、シルエット。
窓越シ付キ合イ。
-恋日和-
学校から帰って来て、部屋に入っては荷物をどさどさっと放り、ベッドに上がってカーテンごと窓を開ける。
「隣のおにーさんっ!!」
そう呼びかければ、少しして真向かいの窓が開かれる。
寝起きとでも言わんばかりの大あくびと、部屋着。
どうやら今日は大学はお休みだったらしい。
「何だい、隣のお嬢さん」
少し気だるそうな声だが、別に疎ましく思ってはいない事はもう分かる。
飛び越えるには無理のある距離だが、大声で話さなければならないほど遠い訳でもない。
まぁ、飛び越えるにしても、どちらも小窓なので厳しい。
「ちょっとおにーさん、もう夕方だよ? 夜眠れなくなったら大変だよ?」
「はいはい。で、今日は何」
「何よー、その訊き方! いいよいいよ、話してやんないもんねーだ」
「あぁ~悪かったよ、ちゃんと聞いてやるから」
「よろしいっ。あのねあのね、」
お隣のこのおにーさんは半年くらい前に近所でも有名なこの立派な家に引っ越して来た。
しかし私達の出会い方は、普通の可愛いトキメクような良い出会い方じゃなかった。
いつものように帰宅して、部屋に入った私を迎えたのは、向いの部屋でお着替え真っ最中のおにーさん(どこまで脱いで着替えていたかはご想像にお任せ致す)。
もちろん、そんな時の女の子のお決まりの反応と言えば……。
「うっぎゃああああぁぁぁぁぁぁっ」
ちょっと違うけど、まぁこんな悲鳴。
慌ててカーテンを閉めようとしてベッドに躓き、木枠に額を強打。
「ぐはぅあっ!!!」
あぁ…私死ぬんだ…こんな情けない死に方で…。
って意識が遠退いて、気付けば向かいのおにーさんが必死に私の事を呼んでいた。