薄桃の景色に、シルエット。
「……あんたと来年も七夕を過ごせるように」

「マジで? マジでー! もう可愛いなぁー!! ありがとっ」

「別に。他に願う事もなかったしね」

「う゛…前言撤回。可愛くない」

「何で」

「言ってる事がムカつく」

「だから何で」

「他に願う事がないって、そりゃそうでしょうよ! アンタは頭も顔も性格も良いんだから! 他に願い所がないに決まってるー!!」

「そう? 人から凄く羨まれる人って案外、本当に欲しいものは手に入らないように出来てるよ」

「……そんなに欲しいものが、あるの?」

「まぁね。あ、教えないよ」

「いじわる」

「ありがとう」


 頬を膨らませる彼女は来年高校生になるとは思えないくらいに幼く見えた。

 それでも、去年よりは随分と大人に近づいた。

 こうして女の子はあっという間に女性になっていくのかと思うと、少しだけ寂しくなる。

 あたしも、周りからそんな風に見られているだろうか?

 年相応に見られないからあまりそうは思われていないかも。

 中学生なのに高校生とよく間違われる。

 身長が高いっていうのもあるかもしれないが。


「来年は、見れるかなぁ。天の川」

「そう祈るしかないんじゃない」

「じゃ、一緒に祈ろう! 今日は隠れてる天の川に!」

「やだよ。そんな痛い事」

「痛いとか言わないで。地味に傷付くし」

「……ま、そのうち見れるよ」

「だね」


 そう言ってあたし達は最後の七夕を終えた。

 最後というのは、その翌年の七夕には彼女には恋人が出来て、あたしより恋人と過ごすようになったからだ。

 あれから数年、あたし達は一緒に七夕を過ごしてはいない。


 高校も同じ所へ行った。

 あたしは彼女の一番傍に居たかった。

 願ったのは、それだけだった。
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