薄桃の景色に、シルエット。
 チーンと電子レンジが、自分の仕事は終わったと自己主張した。

 覗けば、千切りされた人参がレンジアップあれている。


「卵とじ?」

「うん」

「じゃ、私作るよ」


 チキンを揚げる横のコンロで体型の似た母娘が並ぶとやけに狭い。

 脇から菜箸をフライパンの上に持って行くので精一杯だ。


「あ、ニラも入れようか」


 唐揚げをそっちのけでニラをカットし出す母。

 焦げないか心配していると、火を弱めるよう声がかかる。

 うん、さすが母。しっかりしてる。


 出来上がった唐揚げと人参の卵とじを更に盛り、弁当を彩り始める母。

 その横で朝ご飯にする私。


「ねー、こんな時間だよ。あの子起こさなくていいの?」


 時刻は朝7時30分。高校生の妹はいつもなら起きて風呂に入ってる時間だ。

 母はちょっと迷いつも起こしに行った。

 妹が起きて来る。目覚ましが鳴らなかったとか何とか。

 早起きの妹もたまには寝坊してしまうようだ。

 まぁ私が高校生の時はこの時間の起床は充分早起きだったけれど。

 とか思ってる内に、妹はパタパタと家を後にした。母と二人、その背中を見送る。

 次は母の番だ。

 出勤の身支度を始める。

 その最中、何故かマク●ナルドの話になる。


「あそこの珈琲、美味しいの知ってる?」

「美味しい店と不味い店があるんじゃなかったっけ」

「ううん、最近は味も均一になってて美味しいの」

「へー」

「あそこの珈琲なら買ってでも飲みたいって思う」


 さすがマク●ナルド。歌舞伎界の人間を多数起用して大々的に宣伝しただけあるな。

 そう感心していると、身支度を済ませた母が言った。
< 40 / 45 >

この作品をシェア

pagetop