ミステリービルディング
最近、やっと気付いたのは、この、隣の青年が、しょっちゅう席をはずすことだ。

仕事は、ちゃんと仕上げているから良いとして、
なぜか頻繁にいなくなる。

別にいいんだけど・・、でも気になってきた。

青年は、中川太郎という名前。肌が白く、きめ細かく、だから、すぐ顔が赤くなってしまうらしい。
目が細く、どちらかというと釣り目で、クールな顔立ち。

希が、ペンを拾ってもらったときに、お礼を言ったら、顔が真っ赤になっていたっけ。だから、その時から、希も、少し、気になっていた。

席は、ブースになっているので、よく見えないのだけれど、ちょっとした瞬間に、さっと席を立っているようだ。

そして、こっそり観察してみると、動きが、妙だ。
脚のばねが、必要以上に強いというか、とにかく、小さな動きが素早い。バスケットボールなどをしているような素早さ。
若いってことなのだろうか。体が軽くて仕方ないって感じの動きだ。

ほとんどの大人たちは、子供時代、体の重さを感じることはなかっただろう。

しかし、だんだんと、体の重さや、硬さに気付いていく。

あんなふうに、俊敏に動けたらいいだろうなあ、世の中がもっと楽しくなるんだろうなあと、羨んだ。

30歳、まだ若いけど、少しずつ、体は重くなり、心も重くなっているのを、希は感じていたのだ。






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