王子様の本性
『ちょっ、拓海、あんたねぇ!アタシの莉里に何してんのよぉ!?』
美咲ちゃんはそう怒鳴りながら今にも拓海に殴り掛からんばかりの体勢だった。
『わりぃわりぃ。まさか莉里がそんな派手に転ぶとは思わなくてさ』
なんて、拓海はおどけた表情を見せながら目立つ容姿を惜し気もなくあたし達に向けてさらした。
すると、あたし達のやり取りを迷惑そうな顔をしていた女の子だって、その笑顔を見ればイチコロだった。
『思わなくてって!あんた莉里を甘く見てんじゃないわよっ!』
『だからわりぃって言ってんじゃん』
二人はまだ言い争っていた。止む気配がなさそうだ。まるで痴話喧嘩を見ている気分。
拓海と呼ばれた男は、
「藤崎 拓海」。美咲ちゃんと拓海は小学生の頃からの腐れ縁でそれをきっかけにあたしとも仲が良くなった。
拓海は容姿がとにかく素晴らしい。メルヘンに憧れるあたしから見たら王子様って感じではないけれど普通にカッコイイとは思う。だから王子様に憧れていたあたしは特別な感情を拓海に抱いた事はなかった。
『あたし』、以外は。
ものすごくモテていたのは知っている。その容姿で性格がいいときたら寄って来ない女の子がいないわけないじゃないですか。
クールそうなその容姿とは別にとてもおちゃめなトコロのギャップがいいと言うコ達もいた。しかも、笑顔が好評らしい。