金烏玉兎


どこか行くの?と問う前に照大は盛大な溜め息を吐いた。


「帰ってくるの遅いから、心配した。」

「あ、ごめん!途中で…。」


先輩に会った、とはどうしてか言いづらい。

何がそうさせるのかは分からないけど、私の口は勝手に動く。


「友達と、会って。」


照大が、先輩の話題になると少しだけ機嫌が悪くなる気がした。

本当はそう思った。


「お帰り。寒いから早く中入れよ。」


手を引かれた。

何故か、先輩にも触れられた場所なのに。

照大に触れられたら、ドキリとしたのは黙っておこう。



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