金烏玉兎


多分、聖が家に居ないのを悟った。


「ハム、猫なんだから聖の匂いとか辿れないの?」

あ、それは警察犬か。

言った後に気付いて、ちょっと悲しい。

東仲さんに言った方が良いよね、と台所へ歩みを進めようとした時。


「…あ。」


蔵の方で黒い上着が倒れている。

正確には上着じゃなくて聖。

玄関から傘を持って、そっちへ走る。

いつからこんなことをしていたのか、少し聖の上に雪が積もっている。


「…聖っ。」


白い着物の上に黒い上着を羽織っただけの聖は、冷たい。



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