金烏玉兎


五センチほど降り積もった雪が溶けて、膝が濡れて冷たい。

私は、聖の手首を掴んで引っ張る。

…私より軽い。

少しグッタリしていた聖は、急に肩や髪の毛についた雪を振り払った。

水滴が傘を持つ私にもかかる。


「ちょっと。」

「腹、減った。夕飯は?」

「起き上がってそれ?風邪引くよ、まず寒いって言えないの!?」

「僕が何言おうと僕の勝手だろ。」


立ち上がった聖は首を回しながら、屋敷へ歩く。

私もその後を追った。




< 129 / 190 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop