金烏玉兎
さよなら、と呟く貴方の手を。
お正月は淡々と過ぎて行った。
私の実家は聖や静綺や照大みたいに地方を出たりはしない。
大都会の真ん中にあるそのビルへ行くのには、少し躊躇する。
お母さんがお雑煮を作っている後ろ姿を見て、家に帰ってきたんだと心が落ち着く。
…それにしても、お母さん…
「太った…?」
くるり、と素早く回ったお母さん。
「桜嘉!帰ってきたら、『ただいま』でしょう!?いきなり失礼なことを親に向かって言わないのよ!」
どこかで似た台詞を聞いた。
「た、ただいま。」