金烏玉兎









読みたい本を聖が持っていた気がする。

今日は静綺も寄り道をしていて、照大も部活だから屋敷内が静か。

…まぁ、煩い原因といえば私なのかもしれないけど。


「聖、本貸して。」


襖を開けると、縁側に寝そべるハムだけが見える。

…あれ?

屋敷内と敷地内を全部捜しても居ない。

最近は雪は降っていないし、蔵の中も見たけれど居ない。


「東仲さん、聖知りません?」


台所でカレーを作っている東仲さんの手が止まった。

私は首を傾げる。



「聖さんは、もう戻らないかもしれません。」



悲しげに笑ってた。



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