金烏玉兎
撒き散らされたようなそれらに、少し咳をしながら一階の扉を開けた。
凍りついた場の空気。
事務所の机の上に座るのは、紅茶髪の大柄な男。
その周りにいた人の目も全てがこっちに向く。
「…すみません間違えまし」
回れ右をして、扉を開けようとドアノブに手をかける前に。
バンッと目の前で扉を叩かれた。
同じ目線にある大きな手に、冷や汗がタラリと垂れる。
私って、なんでこう…。
考えなしに動くんだろう?
聖の無事を確認すれば良いだけなのに、乗り込んでしまうんだろう。