金烏玉兎


懸命に身を捩って、それから免れる。

キラリと視界に光る物が見えた。

サバイバルナイフ。

屋敷にあったような、刀とは全然違う。


聖が危ない。

死んじゃう。


体がそっちに向かって、止めなくてはいけないと思う。


「桜嘉!!」


また、だ。

黒い塊───聖が、私の前に来る。

どんなスニーカーを履いているのか知らないけど、私の足を踏んでいてすごく痛い。

でも、多分。

聖はもっと痛い。


「…はっ。」


吐き捨てるように笑った。



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