金烏玉兎


足元には紅い血がポタポタと落ちてきている。


「僕の血が見たかったんだろう?

ほら、気持ちの悪いくらいの紅だ。」


そう言った聖を見るナイフを持つ男の顔は、強張っている。

私からは見えなかったけど、グチャリと聖は体からナイフを抜いた。

カラン、と紅い血のついたナイフが床に落ちる。

同時に聖は、目の前に立つ男の顔面を殴った。


ぐらりと傾いた体を抱きとめて、背筋が凍る。

歪んだ顔からどれだけ痛いのかが分かるし、黒いTシャツが濡れている。



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