金烏玉兎


言葉を確認する間もなく、立ち上がらされて扉の方に向かう。

視界の端に、こっちを目を細めて笑うような顔を向ける静綺が見えた。

個室の病室を抜けた私と照大は、病院を出た。


「どこ行くの?」

「決まって無い、かな。」

「じゃあ足はどこに向かってるの?」


ピタリと止まる体。

照大の足の長さは勿論私の足の長さより長くて、自分が早足だったのに気付いた。


「俺の歩く道って、大体決まってるんだ。」


繋いだ手は熱い。

まだ冬だというのに。



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