金烏玉兎
あの時のショックは大きかった。
そして、この水素よりも軽い先輩は私に何の用があるのか。
「桜嘉ちゃんの住んでる屋敷に、十六夜聖っているよね。」
驚いた、なんてものじゃない。
心臓が止まるかと思った。
だって、聖は学校に通っていない。
あの雨の日、照大は確かに聖が有名だと言っていた覚えはある。
…でも、なんで。
「どうして、そんなことを?」
隠しているわけじゃない。
ただ、知らない事を前提にしてしまっていたからだ。