金烏玉兎


「いや、ここまでで良いよ。ありがとね。」


笑って言う先輩。

「でも、さっきの呟いた声が気になります。」


鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした先輩に笑ってしまう。

開いていた傷が、癒えていく気がする。

「母親が必死なんだ。俺は別に十六夜とかオーカちゃんの家系なんて気にしてないし、無関係で生きていっても良いと思ってた。」

「…お母さんが?」

「そう。十六夜の家の愛人の母親。」


自嘲的に緩む口元に、何故か目を逸らしたくなる。



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