金烏玉兎
先輩の生きてきた世界。
私は、それを知らずに告白をしてしまったのかと思うと恥ずかしい。
「だからね、逝っちゃうまでの少しの間。聖に雇ってもらって関係を持ってんのを見せてるワケ。」
風が吹く。
長袖を着ていても、布の隙間に冷たい空気が入ってくる。
「逝っちゃう…って。」
「余命2ヶ月。新年を迎えられるかどうかってところ。」
秋は足早に過ぎる。
どうして、先輩はそんな話を笑顔で出来るの?
世界でたった一人のお母さんが…死んでしまうかもしれないのに。