金烏玉兎
でも、自分が思うより周りの世界は色んな形に変形していた。
私は…知らないことが多すぎる。
漠然とそう感じながら、背中を、心の中を、夜の闇に支配されてしまいそうになる。
…不安がぐるぐると渦巻く。
「桜嘉さん?」
東仲さんの声に現実に戻ってこれた。
「どうしたんですか?こんな場所で。冷えますよ。」
綺麗な淡い紫の着物を着た東仲さんが現れる。
久しぶりに見る気がするその姿に、懐かしさを感じた。
「東仲さん!」
思わず抱き付く。