金烏玉兎
答えるまでに時間があると、百合ちゃんは助け舟を出すように、
「そこ、水島の席の前だから。」
私の席を指差す。
確かに。
「うん、ちょっとだけ。」
「へぇ。なんか最近、水島って忙しそうだよね。最初の時は見ると寝てばかりいたのに。」
百合ちゃんの人間観察は侮れない。
聖のこととか、屋敷のこととか笹原さんが言っていそうで怖い。
「急ごー。」
「何かあるの?」
「桜嘉が駅前まで行ってなんか食べようって言ったんでしょう。」
「あ、そうだった。」
さっき言ったことすら碌に覚えてない。