【企画】廃陸の旅団外伝①【キャラバト】
リュックが見つけた人物の手には抱えきれないほどの食材が詰め込まれている。
口をモゴモゴしているところを見ると、すでに口に運んでいたようだ。
調理員達も駆けつけ、その犯人を見た瞬間に呆れた声を落とした。
「……はぁ、またか」
「全くです。何度食材を盗み食いするな、と言ったら分かるんです?」
調理員達の呆れていて、でも何処か楽しそうな声。
「もう盗んじゃダメですよ?ジン」
「モゴ、もがっ……
盗人のリーダーに盗むななんて良く言えたもんだな、お前等!」
「盗人が盗むのは宝であって、昼飯の食材ではありません。
昼飯の食材を盗み食いするのは子どもの悪戯です」
ジンは納得していないのだろう、口をぷぅっと脹らませ、明後日の方を見ながら食材をしぶしぶとジェフに渡した。
ジェフは食材を受け取り、微笑む。
「もう少しでジンの好きな鹿肉のソテーが出来ますよ。
また見学して待たれますか?」
ジンはにっと笑う。
年相応、いや、もしかするともっと幼い笑顔で。
「……ちょっとだけ味見させてくれる?」
「まったく、少しだけですよ?」