【企画】廃陸の旅団外伝①【キャラバト】
3分ばかり進んだ頃。
ジンは違和感を感じ取る。
「さっきまで魚が泳いでいたのに、急に居なくなった?」
ただ暗い青だけの不気味な空間で、ジンが辺りを警戒した時にはもう遅かった。
「キャルギャルキャルキャル……」
「ギュルギュルキュルギュル……」
ジンを円状に囲んでいた何かの群れ。
緑色のひだの様なものがゆらゆらと波に揺れる。
「……なんだこりゃ。ワカメの化物?」
ひらひらと無数に揺れる海藻。
勿論海藻がジンを囲みこみ、殺気を放つわけがない。
「海藻を住みかにして補食するタイプの魚がスフィアの異常で魔物化したのか……」
「ギュルギュルキュルギュル……」
「キャルギャルキャルキャル……」
「お腹空きまくってるみたいだけど、この辺りの魚を食い荒らしたのお前等だろ?
そういうんはな……
自業自得って言うんだぜ!!」
飛び出したジン。
一瞬にして目の前にいたワカメの化物の前に現れる。
「おらよっ」
豪快な回し蹴りが水を切り裂いてワカメの化物を捕える。
「――――なっ!?」
蹴りだした足に感触はなく、ずむっと海藻の中に足が沈んでいく。
足を無理矢理に抜こうとするのだが、ビクともしない。
キャシンキャシン。
海藻の中で刃物と刃物が擦り合う様な音が僅かにこぼれてきた。
そう、まるでハサミを動かしているかのような音だ。
「おいおい……まさか。
こいつオレの足を食い千切る気か!!?」