【企画】廃陸の旅団外伝①【キャラバト】
詠唱の終わりと共にテレサが薔薇の杖を地面に突き刺すと、魔方陣が出現した。
魔方陣は青白く輝くと、目も眩むような閃光を辺りにばらまき、その中心に人影を写すのだった。
その光が治まると魔方陣があった場所にそれは美しい女性が立っていた。
「あら、ブリュンヒルデじゃない。久しぶりね」
ヒラヒラと揺れるドレスの様な太古の衣裳に身を包んだ女性が、嫌そうにブリュンにそう言った。
「私に気安く話掛けるなといつも言っているだろう、ムーサ」
「ごめんあそばせ?あなたもいつも通りの仏頂面で安心したわ」
2人は同時に顔を明後日の方向に向けた。
「喧嘩している場合じゃないの。
逃げ出した盗人を捕まえたいの。まだそんなに遠くには行ってないと思うわ。
あなたの"歌"でどうにかならないかしら?」
テレサはキラキラとした瞳でムーサを見る。
実はこの瞳の輝きがムーサは苦手だった。
それはもう全身に鳥肌がたつほどに。
「わ、わかったわ。やってあげる。
やってあげるからその気味悪い目を止めなさい。今すぐ!早急に!!最優先事項で!!!」