【企画】廃陸の旅団外伝①【キャラバト】
ムーサは大きくため息を吐くと何処からか取り出した厚い本をめくっていく。
その本には古代文字で何かが書かれているようだ。
「近場の探索ならやっぱりこれしかないでしょ。
お聞きなさい『綿毛の旅唄』」
ムーサが声を出すと本の文字が輝き出した。
それと共に流れる優しげな旋律。
まるでそよ風の様な歌は波紋のように、辺りの草木を柔らかく撫でる。
伸びやかに、麗らかに、それでいて何処か悪戯心もあるようなそんなメロディ。
小さな光の粒がふわりと夜空に舞って、消えそうになりながらも辺りに散っていく。
「…………見つけた」
ムーサは歌を止めると、確かに盗人が消えていった方向へと振り返る。
「ここから約4キロメートルほど先。シュトラツ山の坑道の前で何故か止まっているわ」
「さっすがムーサね。
さっそく行くわよ2人共」
テレサが走りだす。
しかしブリュンとムーサは動く様子がない。
「あれ?2人共……?」
どうして来ないの?と言いたげな顔に、ブリュンはまた小さくため息を吐いた。
「テレサ、何度も言うようだけど……私達召喚物は魔方陣から一定の距離は離れられない」
「そ……そうでした」