LOVE・GAMELY -恋愛遊戯- (全199話)
■夢の中

薬臭い室内
響く赤ん坊の声

「…ギャァ…オ…ギャア」

きっと…
僕はこうして生まれた




「やっぱり太平洋にしましょう?」

名前は「太陽のように明るく」ではなく
「太平洋のように広く穏やかに」






「貴方ッ また他の女の所にいくのねッ?!」


髪の長い色白の女
この人はお母さん…?

「おかあさん? どうしたの?」

じゃあ後ろにいる子供は…

「洋ッ…何見てるの!!」

そうだ…
幼い頃の自分…


夜を待ち、母さんは1人で泣く

そして夜が明け、また続く


母さんの笑った顔なんて見た事もなかった

父さんに置いていかれる母さんの顔が辛そうで、声を掛ける

いつもその後だった
母さんの拳が飛んできたのは…

「死にたい…」

何度も聞いたその台詞
痛みで朦朧(モウロウ)とする意識の中、母さんの涙が見えた…




あれはいつだったか…

一枚の紙を睨み、父さんと母さんが話していた

ドラマや映画でよく見る紙
離婚届け…


「私は嫌よッ 洋だっているのに!」

母さんは紙を丸め、投げ付ける

そんな妻を見て父さんは吸っていた煙草を灰皿に置き、外へ出ていった


「おかあさん…? 大丈夫?」

俯き震える母さんを幼い俺は覗き込む

その瞬間、投げ付けられた灰皿
まだ煙の立ち上る煙草は、体の上

「熱ッ…!!」

プラスチックの焼ける匂いと、肌の焦げる匂い

「…何であんたがいるのよ…」


もううちは限界だった…
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