LOVE・GAMELY -恋愛遊戯- (全199話)
■逆鱗
○Side 奈穂

なにも人間が代わったわけじゃない
記憶が少し失くなっただけ

話せば…
きっと解ってくれる






理香を見送り、病室に戻ると背中を向けたまま横になる洋くんが見えた

『…寝てました?』
『いや… 起きてた…』

返答がある事にホッとし、ベッドの端に座る

『あんた俺と付き合ってんだって?』

洋くんはそう尋ねた後で私の手を握った

『あ、あの…』
『彼女なんでしょ? 手ぇ繋ぐぐらいいいじゃん』
『そうですけど…』

温かい手…
だけど少し違う
洋くんはもっと優しく握ってくれた

『洋くん… 初めて会った日の事、覚えてますか?』
『…さぁね』
『ほら、雪の降った日… 洋くんがトラを見つけたじゃないですか…』

あの時はまだ、こんなに洋くんを好きになるなんて思ってもみなかった



『だから、さっきから言ってんじゃん』

と突然、洋くんは私の腕を捩伏せベッドに倒す

『痛…ッ』

至近距離にある唇…
その唇がそっと動いた

『さっきから言うようだけどさ… 俺は、あんたに心当たり無いんだってば』
『洋く……んんッ』

言葉を遮るように荒々しく唇が重なる

『…人違いじゃねーの?』
『そんな…』
『俺はラッキーだけどね あんたみたいな可愛い女が彼女でさ』

意地悪な笑みを浮かべると同時、背中に回した手にホックを外された

恐い…ッ
瞬時にそう感じ逃れようとするが、男の力に敵うはずがなかった

すぐに両手は捕まれベッドに押し付けられる

『好きなんでしょ? 俺の事』

好き
大好きだけど…

『私の好きな洋くんは… こんな人じゃない…ッ』

私の好きなのは貴方じゃない
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