LOVE・GAMELY -恋愛遊戯- (全199話)
■返せない

『なぁに怒ってんの?』
『…』

相模は服装を直しながらコチラをキッと睨む

『中に出すのは勘弁してやっただろ?』
『…もし妊娠したらどうするんですか?』

その問い掛けに一瞬、戸惑ったが答えは1つしか無い

『産めば?』
『え…?』
『あんたなら育てられるんじゃん? うちと違って…』

デキてしまったモノにどうこうするつもりはない
俺は相模の意思に従うまでだ

『…お母さんの事、覚えてるんですか?』
『…そりゃね、あんな事されたら忘れられないっての』

苦笑しながら奈穂の頭をポンと押す

『あんな事って…虐待の事…?』
『それもだけどねー… 俺、風呂場で殺されかけてるから…』

6年経ったとされる今もまだ鮮明に覚えてる

鉄錆(サビ)のような血の匂い
首に触れる氷のような手…


『俺ねぇ、母親に殺されかけた時に逆に殺して逃げたんだよね、その途中に階段で落ちて…』

それでどうして今に至るのかは解らないけど
「消えたくない」とただ願った


『そんなの信じない… 洋くんはそんな事しないよ…』

相模は涙が零れそうになるのを堪えて言う

「消えない」
「消えたくない」
それだけを思い、刀を振りかざした

だからね…

『「洋は洋は」ってうるさいけどさぁ… 俺も洋なんだから信じてくれてもいいじゃん?』
『貴方なんか洋くんじゃない…ッ』

目を真っ赤にし、涙を零す相模の腕をグッと捩上げベッドに倒す

いつにない強い力…

『そんなに俺が嫌なら他の男と付き合ったら?』
『…ッ…』
『どうせあんたの好きな洋は帰ってこないんだし』

だから…
あんたに「洋くん」は返せない

俺は消えたくない
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