LOVE・GAMELY -恋愛遊戯- (全199話)
■偽善

青い空が少しずつ茜色に染まる
それはまるで、あの日の浴室のよう…

『馬鹿みてー…』

6年も前に死んだ女に脅えてたなんて…




『洋! 奈穂知らない?』

完全に空が赤くなる頃、理香が教室に入ってきた

『奈穂…?』
『相模奈穂! 下の名前くらい聞きなさいよ!』

理香はそう言ってポカッと俺の頭を叩く

『悪かったな… あいつなら男と帰ってるよ、ほら…』

指差した窓の外…
そこには牧原に手を引かれ校門を出る奈穂の姿が…

『ホントだ…って何で洋は黙って見てんの!』
『さぁ… 関係ないから…かな』

窓の外では奈穂の姿が曲がり角に消えていく
平然とそれを見ていた俺に理香は不信の目を向ける


『…昔の洋に戻っちゃったね…』
『んあ?』
『1年の時も窓の外見てたよ?』

自分の彼女が他の人と帰っていく所…
たまに手を繋いでる時もある

それを平然と見てた


理香はそう言うと、真っ直ぐに俺の目を見る

『昔の洋をずっと好きだったけど… やっぱ好きじゃない』

怒っているのか
悲しんでいるのか
読み取れない表情…

『…だから?』
『…ッ…』
『そんな事言われたって戻るわけじゃないってのは、あいつも解ってる』

だから俺に強要しないし
向こうも自由にやってる

『それに他の女に一途な俺の方がいいってのも偽善だと思うけど?』

他の女を一途に想っている男には何の望みもない

本当にそれがいいと言うなら、単なる偽善に過ぎないだろう


『ううん… 体だけなら要らない…』

俺の言葉に理香は目に涙を溜め、答える

『偽善かも知れないけど… 奈穂と2人でいた時の笑顔の方がいい』

その顔に無性に腹が立った
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