LOVE・GAMELY -恋愛遊戯- (全199話)
■絵のない夢

【…い…痛いよ…】

啜り泣く子供の声
映像もなく、ただ音声だけ

そんな夢も、もう見飽きる程に見た

『…何なんだよ…』

もしかしたら、無くした記憶に関係があるんじゃないか

何度かそう思ったが、夢は進まず
いつも音声だけの夢で終わる







夢見の悪さもあり、少し遅刻して登校する
少し気になり奈穂の下駄箱を開けるが、中には小さな上履きが入っていた

来てない…

昨日、あんな事があったばかりだ
自分を避けて休んだのかも知れない

一瞬そう思ったが、その考えはすぐに消された

『奈穂なら風邪で休みだよ』

後ろから聞き慣れた声がしたから…

『理香…』

理香は俺にとって元カノに当たる
とはいっても、もう1年以上も前だが


『理香って奈穂と友達なんだ? 意外…』
『洋の方が意外! 奈穂なんて今までの洋のタイプと正反対じゃん どーしたの?』

理香は明らかに不信の目で見るとハァと溜め息をつく

『…さぁ 俺だって好みが変わることあるからね』
『へぇ…』

俺だって元々、軽い女が好きなわけじゃない
ただそんな女しか近付いてこないだけ…

『じゃあ私は教室行くよ』

素っ気なくそう言うと背中を向ける理香

俺はそんな理香の手を引っ張って自分に寄せた

『何?』
『悪い… 奈穂の住所教えて』
『自分で聞きなよ!』

パシッと手を払いのけられた手が行き場を無くし、空を掴む

『あいつが俺に教えるわけねーから』

教えたとしたら、相当の馬鹿だろう
わざわざ火に飛び込んでくるようなもの

『仕方ないなぁ…』

溜め息をつきながらも理香は鞄の中のノートを破って住所を書いてくれた

『ありがと』

俺はその地図をポケットにしまうと、理香に笑みを見せた
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