LOVE・GAMELY -恋愛遊戯- (全199話)
■小さな願い
○Side 奈穂

彼の真意も解らぬまま夜が過ぎ、朝が来る

何故か連絡したらいけないような気がし
メモリの「ま行」は開かなかった


いつも通りの朝が来て、私は学校に向かう

彼に会ったら何て言おう
「おはよう」と自然に言えばいいのだろうか


そうしてる間に彼の目の前へ姿を表してしまった

『あ… おはようございます…』

昨日、私に触れていた手は彼女の手を強く握る
それに気付いた瞬間、ブワッと目頭に熱が集まった


『…綾… 今日、帰りにビデオ屋行っていい?』

え…?
目を…反らされた…?

声が小さすぎて聞こえなかったのか
そんなはずはない

だって彼は少し戸惑いを見せた


『ヒ…ック…』

自分の何がいけなかったのか

図々しくも彼女の前で挨拶なんてするべきじゃなかったのか

目から流れる生温い物で前も見えず、進む事すら出来なくなってしまった

やっぱり遠い…
遠くて遠くて触れられない…

『す…き…』

そう気付いてしまった事で余計に遠く感じた





教室に入ると理香が笑顔で奈穂を迎えてくれた

『理香ぁ…』
『奈穂? 何で泣いてるの?』

彼女になれなくていい
それでもいいから傍にいたい

もうそれすらも叶わないのかな…
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