蒼空Letter

やっぱりこの間書いた手紙は出さないでおこう。


そう思ってお母さんが会社から山ほど持ってきたいかにも輸入品だなって感じのレターセットの中からあたしにしてはカラフルな柄のを選ぶ。


だって不安だから。


色んな検査をする度に首を傾げたり眉間に皺を寄せて検査担当の先生と何かを話していると不安になる。


どんどんモノクロな世界と「死神」が近寄ってくる様な気がするから。

だから敢えて、明るい柄のレターセットで「あたしは元気」とアピールしたかった。



手紙を書いているとドアがノックされて制服姿の明日香が「オーッス!」と入ってきた。


「笹井先生からOKが出ているプリン持ってきたよー」


と言って椅子にさっさと座る。

このプリンは低カロリーで何がOKなのかわからないけど。笹井先生が薬を飲まなくても食べてもいいと言った唯一あたしが気兼ねなく食べれる甘い物。

中学の時、明日香がお見舞いに来てくれた時に、お母さんが甘いものを大量に買っていて「どれなら食べれますか!」と言っていた中の一つがコレ。

それを明日香はちゃんと見ていたみたい。


「嬉しいけど、お母さんも買ってきそう・・・」


「大丈夫、ルウコママにあたしが買うからってメールしてあるから」


2人でプリンを食べていると明日香があたしの机を見て。


「随分なレターセットの量だね」と呆れた。


「お母さんが会社で仕入れしたものだからね」


「ソウちゃん心配してたよ?メールの返信あくるけど電話に出ないって」


さすがに個室だからってうかつに電話なんて出来ない。


検温だとか血圧だとかそんな声聞かれたらアウトだ。
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