蒼空Letter

屋上に向かいながら、不安がいっぱいよぎる。


手紙で聞かれた、図書室の本の事。

お昼に読む癖が抜けなくて、ソウちゃんが来る前にいつも読んでしまう。


『あの本は何?』って聞かれたけど、『今は言えない』って曖昧に答えちゃったし・・・。


後は『体育いつも休むの?』って事も聞かれたけど『貧血症で』で誤摩化してる。


ソウちゃんは何でもちゃんと話してくれるし聞いてくれるのに、あたしは嘘ばっかり。

絶対に言わなきゃいけない事を隠してる。



階段を上がりながら、ふと思った。



あたしが早退した日、ソウちゃんは戻って来なかった。

でも、ソウちゃんはちょっと電話で話した時にそんな事言ってなかった。

部活も上の空だった。

3日間、普通なメールだったけど『本当に大丈夫?』と何度も入ってきた。


(まさか・・・)


あの本はいつも脇に置きっぱなしにしている。

タイトルこそは見えないけど、グレーの布製の分厚い本だって事はわかってると思う。


(もしかして・・・読んだ?とか・・・)



いや、読んだならソウちゃんは言うと思う。


「何であんな本読んでるの?」って普通に聞くはず。


でも、逆の立場で考えよう。


何だろう?って疑問に思ってこっそり読んだらあたしならどうする?


身内?それとも本人?疑問が出る。


そして・・・聞けない。そんな事、絶対聞けない。いくら大好きな人でも。

だって、それが本当だったら怖いから。
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