蒼空Letter
「後で迎えに来るから」
保健室に着くと、明日香はそう言って出て行った。
シャツのボタンを緩めてベッドに横になる。
(40分損したな・・・)
1週間の貴重な2時間だったのに。
せっかくあんなに近くに座れたのに具合が悪くなるなんて最悪。
しかも、彼は誰かのモノになってしまうなんてついてない。
あんな会話、こっそり盗み聞きするんじゃなかった。
「もー、何なんだよ、「死神」のやつ」
思わず呟くと、「柏木さん、どうかした?」と保健の先生の声。
「何でもないです」
そう答えると椅子が動くキィっという音がした。
ため息をついて布団を被った。
体育の授業の声。
廊下を歩いているバカ笑いしてる女子の声。
そういえば、あたしバカ笑いってした事あったかな?
結構考えたけど、記憶を辿っても中1の時に多分ドラマの話か何かでキャーキャーと盛り上がって笑っていた記憶が最後。
あの時のあたしは何も考えてなくて、毎日が充実していて、でもちょっと反抗期で生意気で、勉強面倒くさって思っていたり・・・
多分『普通』だったんだと思う。
中2の始めまで、あたしはそこらへんにいる普通の子供だった。