蒼空Letter

「あら?服選び?明日出かけるの?」


ベッドに座ってお母さんが言った。


「そ、デートなの。夜ご飯いらないからね」


あたしは机の所にある椅子に腰をかけた。


「ソウちゃんね・・・。言ったの?病気の事」


「言ってない。今度の検査入院の後言うつもり」



だから、「健康に見える柏木流湖』としての最初で最後の初デート。

この時は病気の事は忘れるんだ。

だって、この後、ソウちゃんに大きな荷物を背負わせるかもしれないから。



「この間、笹井先生に言われたんだけど・・・ルウコは自分の身体の事はちゃんと知りたいって言うから言うわね」


お母さんは悲しそうに言った。


病気になってからの両親との約束。


自分の身体の変調はちゃんと報告してもらう。

余命が出たら言ってもらう。

まだ子供のルミには「治らない」事実は隠す。



「また悪くなってた?」


あたしは出来るだけ明るく言った。


「そうね・・・。数値が今までと桁違いだって言われたわ」


「入院必要かな?」


お母さんが首を振った。


「必要ないって。だた、ルウコに色々な体験をさせて下さいって言われた」


それって余命がわからないけど、余命宣告と一緒じゃん。
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