蒼空Letter

「ソウが、ルウコちゃんはカロリーが高い食べ物は苦手って言ってたから」


言われて全員が醤油をガンガン使っていた事と、前もってソウちゃんが心配して言ってくれていた事がわかった。


「大丈夫です。お気遣いありがとうございます」


と言ったらみんな優しい笑顔で頷いた。

ソウちゃんは「余計な事言うなよ」ってのがモロ顔に出ていたけど。



初めてやってきた人間に対して家族全員に気を遣わせてしまった事と、さっきのアルバムの10歳のソウちゃんへの気持ちを思い出してしまってすごく申し訳なくなった。



出された麦茶を一口飲んで、周りを見てから言った。


「あたし心臓病なんです」


明るい家庭が一瞬で凍り付くような静けさになった。


それでも何とか取り繕う様に瑠璃さんが言った。


「え・・・?心臓?それって大丈夫・・・なの?」


心配そうなソウちゃん一家にあたしは笑う事しか出来なくて、申し訳なさすぎて本当に笑う事しか出来ないしなるべく明るく言うしかなく、首を振った。


その行為が更に水を打ったようにシーンと食卓を静かにさせてしまう。


「治らないです。それに、食事とか色々気をつけないといけなくて・・・。ソウくんには本当に心配ばっかりかけてしまっているんです」


唖然とあたしを見るソウちゃんに微笑んでから続けた。


「あたしがこんな身体なので、ソウくんには沢山迷惑をかけてしまって、すいません」


頭を下げる事しか出来ない。


この明るい家族の、「仮面家族」みたいなウチなんかよりずっと温かい家庭の大事な1人に抱え込ませてしまっている事実を。


あたしの病気がわかった時に「何で?」って涙を流した大事な息子さんを。


そして10歳のソウちゃんに、


あたしはただ謝る事しか出来ない「出来損ないの人間」だから。
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