蒼空Letter
あたしの神様
「あ、柏木さんだ」
(はいはい、あたしは確かに「柏木さん」ですよ)
高校1年の冬。
廊下を中学からの親友、山下 明日香(やました あすか)と歩いていると、あたしを呼ぶ声がした。
呼ばれた相手を見ると真っ赤な顔で目を背ける。
意味がわからない。
ため息をつくと、明日香が笑った。
「相変わらずルウコはモテモテだね」
「どこが?」
名前を呼んどいて無視かい、と思っているあたしには全く理解出来ない。
「どこがって。あんた自覚ないにもほどがあるよ」
明日香の呆れた声。
モテモテ?
こんなあたしのどこがいいのよ。
勝手に「大人しい」とか「高嶺の花」だとか言われてるけど、あたしは別に大人しくもないし、高くもない。
そこらにいる女子高生よりむしろ性格は悪いと思う。
だってあたしの世界って16にして既に終わってるんだから。
そう思うとどうでもいい。
隣で笑っている明日香の方がよっぽどいい女だと思うし。
そんな明日香は1コ上に彼氏がいる。
爽やかなバスケ部の彼。
2人を見てるとちょっと頼りない彼としっかり者の明日香。
理想的な爽やかカップルだ。
何が「柏木さん」よ。
呼ぶくらいなら話かけてこいよ、勝手に理想抱くなよ、と本気で思う。
あたしはみんなが思っているほど性格なんかよくないんだから。