蒼空Letter

あたしの神様


「あ、柏木さんだ」


(はいはい、あたしは確かに「柏木さん」ですよ)


高校1年の冬。

廊下を中学からの親友、山下 明日香(やました あすか)と歩いていると、あたしを呼ぶ声がした。

呼ばれた相手を見ると真っ赤な顔で目を背ける。

意味がわからない。


ため息をつくと、明日香が笑った。


「相変わらずルウコはモテモテだね」


「どこが?」


名前を呼んどいて無視かい、と思っているあたしには全く理解出来ない。


「どこがって。あんた自覚ないにもほどがあるよ」


明日香の呆れた声。



モテモテ?

こんなあたしのどこがいいのよ。

勝手に「大人しい」とか「高嶺の花」だとか言われてるけど、あたしは別に大人しくもないし、高くもない。

そこらにいる女子高生よりむしろ性格は悪いと思う。

だってあたしの世界って16にして既に終わってるんだから。

そう思うとどうでもいい。



隣で笑っている明日香の方がよっぽどいい女だと思うし。

そんな明日香は1コ上に彼氏がいる。

爽やかなバスケ部の彼。

2人を見てるとちょっと頼りない彼としっかり者の明日香。

理想的な爽やかカップルだ。



何が「柏木さん」よ。

呼ぶくらいなら話かけてこいよ、勝手に理想抱くなよ、と本気で思う。


あたしはみんなが思っているほど性格なんかよくないんだから。
< 2 / 427 >

この作品をシェア

pagetop